人生の潤いと共に

主に本について書いてます。特に文学、哲学、学術書についてです。たまにそれ以外のことを言ったり、自論を書くかもしれません。まだ始めたばかりなので記事は少ないですが、一読してくだされば幸いです。

影響を受けた本と著者 三島由紀夫

何を書こうかとあれやこれやと考えていたところ、先ずは自分の好きな本を特に私の人生に深い影響を与えてくれた素晴らしい本について語るのが一番よいかなと。

ジャンルはごちゃ混ぜですが、どうしてそれを好きになったのかを語って行こうと思います。

 

1 三島由紀夫 「盗賊」

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言わずと知れた昭和の文豪の一人です。近年彼がノーベル賞候補であったという文章が公開されたので読んだことない人も名前ぐらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。

一番の代表作は長編小説の『金閣寺』ですが、他にも名の知られる素晴らしい長編小説が沢山あります。

また短編、エッセイ、戯曲(舞台の台本のようなもの)など幅広く活躍していたマルチな才能もあった人です。

 

この作品は私が初めて三島由紀夫全集という黒ずくめで、重厚感のある作品を手にした時一番初めに載っていた作品です。

文語体で書かれており(彼は普段から文語体で書いていた)あまり読み取れなかったのですが、とても美しく上品な文章を書くということだけは明確に伝わってきました。

まるで壮麗な絵画でも観たかのような興奮が私を襲ってきたのです。 

話の内容はざっくりと話すと貴族の(当時の日本には華族というのが存在した)

息子とその母親が軽井沢の別荘に避暑を目的に来ておりそこで許嫁の娘とその家族とに出くわす。本当は男の子の方にはもう一人好きな子がいたのだがどうも高嶺の花のような感じがして思いを伝えられずにいた。そして女の子の方にも同様に恋心を寄せる別の子がいた。しかしながら、二人の思いは虚しく着々と進む縁談の前に消え去ろうとしていた。そのことを証明するために二人はある約束を交わすのだが...

 

ネタバレになってしまうので続きは書きませんが、かなり悲劇的な結末を迎えます。またその結末が暗示するのを考えて見るのも面白いです。

元ネタはフランスの小説家ラディゲの『ドジェル伯の舞踏会』でストーリ構成はかなり似ていますからオマージュ作品ともいえます。それもそのはず、三島は彼に憧れを抱いていたのですから。

三島の最期

彼の死に様はあまりにも有名であり様々な憶測を呼んでいます。

  • 一つは彼の憲法に対する主張
  • もう一つは彼の哲学的ないし文学的な仰々しい演劇のような結末
  • そして彼の死の直前に書かれ遺稿となった『豊穣の海(四部作)

元来彼は幼いころから死について異様な関心を持っていました。

自叙伝的小説の『仮面の告白』にも父親の書斎から画集をこっそりとつまみ、恐る恐る人の死にゆくシーンを眺めていたと書いてあります。

それに三島は『葉隠入門』という著書を記しており、これは武士のあるべき姿を描いた江戸時代の藩士山本常朝(じょうちょう)の著書『葉隠』の解説書です。

そこで常朝はこう言っています。

”武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり”

 これは戦地で死ぬことこそが武士にとって最も望ましい名誉ある死に様ではなく

毎日死を意識して生きることをそして如何なる死にも尊厳を持つことがこの言葉ならびに『葉隠』にあるのではないでしょうか。

 

学生運動と三島の盾の会

三島があのような死に方をしたのには当時盛んだった学生運動も関わっているでしょう。実際に三島と東京大学の学生たちによる論議が映像としても残っております。

彼は常に死を意識しつつ果敢に生を燃やす(倫理的には問わずして)若人たちにシンパシーを感じていたと言われています。しかし実際には彼らの大半は公務員など以前自分たちが声高に敵対していた国家に雇われる職員になっていたり、命を張って自分たちの主張を貫かずあっさりと社会に出て行く(いわゆる一時的なお祭り気分)人々に失望を覚えたのかもしれません。そこで兼ねてから主張していた憲法改正を訴えることにより彼らに主張するとはどういうことなのかを見せようとしたのかもしれません。

ですが、それも失敗し長年彼は様々な憶測と共に世間からは冷ややかな目線で見られることとなったのです。

真相は三島の作品の中?

はっきりとは判りませんが三島は作品の中に自分の思想を反映させていると思います。

歳を重ねる毎に作品のテーマが変わっていくからです。また彼のインタビューも貴重な思索材料となっており大変興味深いです。

youtu.be

ぜひ一度手に取って読んでいただければ、三島の深さが少しだけ解るでしょう。

長編は長いので最初は短編をお勧めします。

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随分と長々と語ってしまい、ようやく気が付いたらこんなにも書いていたとは…。

また次の記事で9~を書いていきますので、どうかお楽しみに。